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タロウのバカのこと 大森立嗣

戦争が終わって25年後、1970年に僕は生まれた。 人類が月に到着して1年、三島由紀夫が割腹する2ヶ月前。 平和と豊かさを謳歌する時代、死の匂いがしない時代。影のない時代。 5歳で父親の暗黒舞踏を見た。死の匂いがしたから嫌だった。 中学で同級生が自殺した。高校で友達が病気で死んだ。昭和天皇が崩御した。 大地震と宗教集団のテロが起きた。ニューヨークでビルが折れるように壊れた。 また大地震、大津波、原子力発電所が爆発した。 資本主義は終わりに向かっている。 それでも経済を豊かにすることに躍起になっている。この中毒性。 大地震も死もわからないものだから、忘却か後回し。 すべてを意味で理解しようとする。それが戦後の日本の歴史。 社会は意味でできている。ビルもコンビニも会社も学校も政府も原発も法律も道徳も。 意味に当てはまらない人や物をどう見ていいのか僕たちはわからないし、怖い。 するとこんなことが起きる。相模原の障がい者施設で19人が殺された。犯人は障がい者に生きている意味がないと言った。生産性がないからだ。彼は障がい者に意味を見出そうとした。だができなかった。 世界で同時多発的に起きている移民問題や右傾化も同じなのだろう。ナチスは否定しているのに。

この映画の主人公はタロウという名前だ。「名前がない奴はタロウだ」といわれて以来、タロウと呼ばれている。タロウは学校に行ったことがない。社会のどこにも所属していない。 タロウに意味を見出せないから、わからないし、こわい。だいたい名前がないから誰だかわからない。 でも意味を見出せないものはいっぱいある。地震も大津波も台風も来る? その意味は?人が生まれてくることも死ぬこともわからない。誰も予め名前を持って生まれてこない。そして人間は生物だから、全員死ぬ。その意味は?  どんなに意味で周りを固めても、わからないものがある。わからないと、排除してはいけない。わからないこととは、自然界の命に触れることだから。 そして僕たちは生きていかなければならない。 『タロウのバカ』もそんな映画だ。

タロウの肌に触れてみる、死の感触がする。 ピストルは言う。道徳から解放しろ。法律も倫理も糞食らえだ、と。 タロウはこの社会のサクリファイスかもしれない。それでもいい。 世界の人々よ、タロウを見ろ。答えなんて求めないで。 なぜ生きる? なんで死ぬ? 答えなど求めるから頭がおかしくなる。 意味などないことを受け入れて、 生まれたことをただ肯定すればいい。 そこにいることを肯定すればいい。 ただ反応する。光を見て、動くものに気づく。 憎しみも喜びもない。感情なんていらない。 無垢な目で世界を見つめろ。 生きることは命をすり減らすことだ。 そして不安になったら祈れ。 祈りは動物になれない人間の唯一の救いだ。 だが世界はお前なんか見ていない。

生死は残酷で清らかだ。それだけがある。 感傷も郷愁も理屈も持ち込むな。 ただのガラス玉で見つめろ。何が見える?   夜を見る猛禽類の眼で見つめろ。何が見える?  だけど俺たちの眼は透き通らない。 それでもいい。何が見える? どこまでいっても動物になれない俺たち人間だけが見えるものがある。 何が見える? 愛だ、クソッ、愛だ。 ああ、人間だ。

 『まほろ駅前』シリーズ(11・14)、『セトウツミ』(16)の軽やかな作風で多くの映画ファンを魅了し、茶道にまつわる人気エッセイの映画化『日日是好日』(18)では幅広い世代の支持を集めて大ヒットを記録。そんな多彩にしてプロフェッショナルな仕事の充実ぶりが目覚ましい大森立嗣監督は、今まさに日本映画界で最も勢いのあるフィルムメーカーのひとりである。しかし、そのフィルモグラフィーにはゴツゴツとした異物のような作品が点在しており、ひとつの型には収まらない映画作家としての底知れない個性を強烈に印象づける。長編第1作『ゲルマニウムの夜』(05)から『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』(10)、『ぼっちゃん』(13)、『さよなら渓谷』(13)、『光』(17)へと至る社会のアウトサイダーたちを描いた作品群である。

 長編11本目となる最新作『タロウのバカ』は、大森監督が『ゲルマニウムの夜』以前の1990年代に執筆したシナリオに基づいている。本来はデビュー作として構想していたそのオリジナル脚本に、現代にふさわしい変更をいくつか加え、とりわけ思い入れの深い物語の映画化を実現させた。社会のシステムからはみ出した3人の少年の純粋にして過激な生き様を描く本作は、上記のアウトサイダー映画の系譜に連なるが、実際に完成した作品は「映画とはこうでなくてはならない」という既成概念を打ち破る、破格の問題作に仕上がった。

 思春期のまっただ中を生きる主人公の少年タロウには名前がない。彼は「名前がない奴はタロウだ」という理由でそう呼ばれているだけで、戸籍すらなく、一度も学校に通ったことがない。そんな“何者でもない”存在であるタロウには、エージ、スギオという高校生の仲間がいる。大きな川が流れ、頭上を高速道路が走り、空虚なほどだだっ広い空き地や河川敷がある町を、3人はあてどなく走り回り、その奔放な日々に自由を感じている。しかし、偶然にも一丁の拳銃を手に入れたことをきっかけに、それまで目を背けていた過酷な現実に向き合うことを余儀なくされた彼らは、得体の知れない死の影に取り憑かれていく。やがてエージとスギオが身も心もボロボロに疲弊していくなか、誰にも愛されたことがなく、“好き”という言葉の意味さえ知らなかったタロウの内に未知なる感情が芽生え始める……。

 社会のルールや道徳を学んだことがなく、常に本能に駆り立てられるままに行動するタロウは、これまで大森監督が描いてきたアウトサイダーたちと比べても破天荒で常識破りのキャラクターだ。叫ぶことで感情を発露し、暴力や盗みを犯すことにも一切の躊躇がないその有り様は獰猛な野生動物のようであり、無垢な天使のようでもある。一方、高校生のエージ、スギオはそれぞれやるせない悩みを抱えているが、なぜかタロウとつるんでいるときは心を解き放たれる。大森監督はそんな理屈を超えた絆で結ばれた3人の行き先不明の疾走を、甘ったるい感傷を排した荒々しいカメラワークで捉え、はかなくも眩い“生”を映し出す。しかし、あまりにも危ういタロウらの行く手には深い闇が待ち受け、画面には息苦しいほどの“死”の匂いが立ちこめる。まさしくこれは生と死の狭間を駆け抜け、刹那的なきらめきを放つ異色の青春映画なのだ。

 そして全編が寓話のようでいて、フィクションであることを忘れさせるほどの生々しいリアリティーとスリルがみなぎる映像世界は、社会的な弱者の排除、育児放棄といった今の日本の理不尽な現実をも取り込んでいる。その虚ろに壊れゆく世界のどこに希望はあるのか。そんな根源的な問題提起を鋭くもダイナミックに突きつけてくる大森監督、渾身の一作である。

 作品の成否の分かれ目は、“何者でもない”主人公タロウになりきれるフレッシュな才能を見出すことだった。大森監督がその難役に抜擢したのは、本作が俳優デビュー作となる16歳のYOSHI。すでにOFF-WHITE、ヘルムート・ラングなどのファッション・アイコンとして脚光を浴びる一方、音楽界でのデビューも決定するなど、無限の可能性を秘めた若きアーティストが、野生の天使というべきタロウを全身で表現した。

 YOSHIと併走するふたりの高校生に扮するのは、縦横無尽に活躍する若き実力派俳優たちである。やるせない悩みを抱え暴力に走ってしまう少年エージを演じるのは、漫画を実写化した数多くの大ヒット作から、『ディストラクション・ベイビーズ』(16)、『あゝ、荒野』(17)といった野心作まで、ずば抜けた感性で幅広い役柄をこなす菅田将暉。大森監督とは『セトウツミ』に続くタッグとなる本作では、死の淵を覗き込んだ若者の彷徨を閃光のごとく体現し、これまでのキャリアで最も凶暴なキャラクターをやり遂げた。エージの親友で、理性的で臆病な少年スギオ役は、『南瓜とマヨネーズ』(17)、『来る』(18)、『町田くんの世界』(19)などの話題作への出演が相次ぐ仲野太賀。3人のうち最も観客の共感を誘うキャラクターでありながら、純粋すぎるがゆえにやり場のない鬱屈を内に溜め込み、暴走するその姿から目が離せない。プライベートでも親友同士である2人の本格的な共演も大きな見どころとなる。

 タロウたちと対峙する半グレ集団のリーダー吉岡役には、『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』(12)、『友罪』(18)などの奥野瑛太。エージ、スギオと同じ高校に通う、援助交際を繰り返す洋子役には、『日日是好日』(18)、『ママレード・ボーイ』(18)の植田紗々がオーディションにて選ばれた。タロウを育児放棄している母親、恵子を演じるのは、テレビ、映画、舞台と幅広く活躍する豊田エリー。そして、元ヤクザで吉岡と共に裏ビジネスを生業とする小田役には、『地獄でなぜ悪い』(13)、『哭声 コクソン』(17)などの日本映画の重鎮、國村隼が扮している。また、音楽の大友良英がインドの民族楽器シタールを導入したエンディングテーマ、その独特の音色も生と死の狭間をたゆたう感覚を創出している。

YOSHI

タロウYOSHI

PROFILE
YOSHIタロウ

2003年2月26日生まれ、東京都出身。香港人の父、日本人の母を持つ16歳。 13歳にして OFF-WHITE のデザイナー 兼 ルイ・ヴィトンのディレクター "VIRGIL ABLOH" に独自のファッションセンスを賞賛され、それをきっかけに有名ブラン ドのモデルやショーへ多数出演。また、「Forbes」が開催した次代を担う 30 歳 未満のイノベーターを表彰する「30 UNDER 30 JAPAN」にて、「The Arts」部門 でその 1 人に選出された。本作『タロウのバカ』で主演として俳優デビュー。 ファッションのみならず、自らアクリル絵具や油絵具を使ってのアート作品 の創作活動も行なっている。 5/15に1st Album「SEX IS LIFE」をリリースしてアーティストデビューを果たした。

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菅田将暉

エージ菅田将暉

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菅田将暉エージ

1993年2月21日生まれ、大阪府出身。2009年、ドラマ「仮面ライダーW」(EX)でデビュー。映画『共喰い』(13)、『そこのみにて光輝く』(14)などの演技で注目を浴び、『あゝ、荒野』(17)で第41回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。そのほか報知映画賞、日刊スポーツ映画大賞、毎日映画コンクール、キネマ旬報ベスト・テンといった映画賞でも主演男優賞を総ナメにする。近年の主な映画出演作は『ディストラクション・ベイビーズ』(16)、『溺れるナイフ』(16)、『セトウツミ』(16)、『二重生活』(16)、『キセキ -あの日のソビト-』(17)、『帝一の國』(17)、『銀魂』(17・18)、『火花』(17)、『となりの怪物くん』、(18)、『生きてるだけで、愛。』(18)など。公開待機作に『アルキメデスの大戦』(19/7月26日公開)がある。

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仲野太賀

スギオ仲野太賀

PROFILE
仲野太賀スギオ

1993年2月7日生まれ。東京都出身。2006年に俳優デビュー。『桐島、部活やめるってよ』 (12)、『私の男』(14)、『あん』(15)などの話題作に相次いで起用され、16年のTVドラマ「ゆとりですがなにか」(NTV)ではゆとりモンスター山岸を演じ注目を浴びる。また、深田晃司監督作品の常連で、『ほとりの朔子』(14)、『淵に立つ』(17)、『海を駆ける』 (18)に出演。近年の主な映画出演作は『アズミ・ハルコは行方不明』(16)、『闇金ウシジマくん ザ・ファイナル』(16)、『走れ、絶望に追いつかれない速さで』(16)、『南瓜とマヨネーズ』(17)、『ポンチョに夜明けの風はらませて』(17)、『来る』(18)、『母さんがどんなに嫌いでも』(18)、『きばいやんせ、私!』(19)、『町田くんの世界』(19)など。

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奥野瑛太

吉岡奥野瑛太

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奥野瑛太吉岡

1986年2月10日生まれ、北海道出身。日本大学芸術学部映画学科に在学中からインディペンデント映画に出演。08年、入江悠監督『SR サイタマノラッパー』(08)に出演し、シリーズ3作目『SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』(12)で映画初主演を務めた。近年の主な映画出演作は、『世界から猫が消えたなら』(16)、『キセキ -あの日のソビト-』(17)、『3月のライオン 前編・後編』(17)、『友罪』(18)、『泣き虫しょったんの奇跡』(18)など。公開待機作に『アルキメデスの大戦』(19/7月26日公開)、第69回ベルリン映画祭パノラマ部門出品作品『37 SECONDS』(20年公開予定)がある。

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豊田エリー

恵子(タロウの母)豊田エリー

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豊田エリー恵子(タロウの母)

1989年1月14日生まれ、東京都出身。テレビ、映画、舞台と幅広く活躍。2006年、『陽気なギャングが地球を回す』で映画デビュー。その他の映画出演作は、『銀色のシーズン』(08)、『ぼくたちと駐在さんの700日戦争』(08)がある。舞台での出演は、「ロミオとジュリエット」(16/演出:藤田貴大)、「BOAT」(18/演出:藤田貴大)、「在庫に限りはありますが」(19/演出:加藤拓也)などがある。

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植田紗々

洋子植田紗々

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植田紗々洋子

1996年9月12日生まれ、東京都出身。CM、PV、舞台など女優として幅広く活躍。17年、映画『Please Please Please』で女優デビュー。映画出演作は『ママレード・ボーイ』(18)、大森立嗣監督『日日是好日』(18)、沖縄国際映画祭で上映された『海まで何マイル』(19)がある。オーディションにて本作の洋子役に選出され、本格的に俳優活動を始めた。

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國村隼

小田國村隼

PROFILE
國村隼小田

1955年11月16日生まれ、大阪府出身。97年に『萌の朱雀』で映画初主演。以降、国内外の数多くの作品に出演。クエンティン・タランティーノ監督『キル・ビルvol.1』(03)、ジョン・ウー監督『マンハント』(18)など海外の作品にも出演、ナ・ホンジン監督『哭声/コクソン』(17)で第37回青龍映画賞の男優助演賞と人気スタ-賞の2冠を獲得。主な映画出演作は『アウトレイジ』(10)、『地獄でなぜ悪い』(13)、『渇き。』(14)、『天空の蜂』(15)、『シン・ゴジラ』(16)、『海賊とよばれた男』(16)、『忍びの国』(17)、『パンク侍、斬られて候』(18)、『泣き虫しょったんの奇跡』(18)、『かぞくいろ』(18)など。公開待機作に『アルキメデスの大戦』(19/7月26日公開)がある。

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角谷 藍子

角谷 藍子

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角谷 藍子

2001年3月23日生まれ、東京都出身。2013年10月12日ラブジャンクス入会。12歳よりダンスを学ぶ。2017年「あいこでしょ」で歌手としてCDデビューする。藍子役はオーディションにより選出された。当初「あいこでしょ」を使用する予定は無かったが、大森監督が角谷藍子の歌を聴いて、劇中で歌ってもらうことを決めた。藍子の歌声は映画の中で重要な位置を占める。

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門矢 勇生

門矢 勇生

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門矢 勇生

1999年10月5日生まれ、神奈川県出身。2007年7月1日ラブジャンクス入会。8歳よりダンスを学ぶ。勇生役はオーディションにより選出された。劇中でも「トンガリ体操No.5」をタロウ、藍子と共に踊り、高いダンスパフォーマンス能力を披露している。劇団にも所属し、ラブジャンクスの公演に出演している。

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荒巻全紀

荒巻全紀

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荒巻全紀

1980年10月25日生まれ、神奈川県出身。瀬々敬久監督『菊とギロチン』(18)の一般オーディションに参加し選出され、倉地啓司役で注目を浴びる。主な出演作に『わが母の記』(12)、ドラマW『贖罪の奏鳴曲』(15)、『月光』(16)、『友罪』(18)などがある。大森立嗣監督とは『光』(17)、『日日是好日』(18)、『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』(19)に続いて4作目の出演となる。

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ACE

ACE

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ACE

1990年3月 17日生まれ、ブラジル出身。日本で活躍するヒップホップMC、ラッパーであり、渋谷サイファーやADRENALINEを主催。CD制作はもちろん、数々のラップのフリースタイル大会で優勝を飾り、司会、プロデュース、ラップスクール講師などマルチに活動をしている。CM、ドラマ、バラエティーにも数多く出演し、映画は本作が初出演となる。

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葵 揚

葵 揚

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葵 揚

1995年12月25日生まれ、大阪府出身。特技は新体操で全日本ジュニア大会出場。映画、ドラマに精力的に出演するかたわら、ユニクロ、Tarzanでモデルとしても活躍。主な出演作に、ドラマ「俺のスカート、どこ行った?」(19/NTV)、大河ドラマ「いだてん」(19/NHK)、「殺さない彼と死なない彼女」(19)、「High&Low ワースト」(19/)がある。

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水澤 紳吾

水澤 紳吾

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水澤 紳吾

1976年9月2日生まれ、宮城県出身。初主演作『ぼっちゃん』(13/大森立嗣監督)で、第23回日本映画プロフェッショナル大賞新進男優賞を受賞。主な出演作に『SRサイタマノラッパー』シリーズ(09,10,12)、『まほろ駅前狂騒曲』(14)、『怒り』(16)、『幼な子われらに生まれ』(17)、『羊の木』(18)、『居眠り磐音』(19)、『五億円のじんせい』(19)がある。

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池内万作

池内万作

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池内万作

1972年3月27日生まれ、東京都出身。95年、渡邊孝好監督『君を忘れない』で映画デビュー。以後、「こちら本池上署」(TBS)、「龍馬伝」(NHK)、「チームバチスタシリーズ・螺鈿迷宮」(CX)、「デザイナーベイビー」(NHK)、『寄生獣』(14)など、映画、テレビに多数出演。HP「万でした・お届け」でのブログを始めヤフー不動産でのコラム連載など、執筆活動も行っている。大森立嗣監督とは『さよなら渓谷』(13)に続いての出演となる。

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伊達 諒

伊達 諒

PROFILE
伊達 諒

1987年7月4日生まれ、岩手県出身。映画を中心にドラマ、CM、PVと幅広く活躍。出演作は、ドラマ「ナポレオンの村」(15/TBS)、ドラマ「熱血硬派くにおくん」(13/NOTTV)、PV「愛が止まるまでは」(SMAP)、CM 「ひとつずつですが、未来へ」(17/JT) 、「ソフトバンク上場編」(18/野村証券)、「G’s baseball party」(16/ TOYOTA)などがある。大森立嗣監督とは、ドラマ「深夜食堂4」(16)、『光』(16)に続いての3作品目の出演となる。

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中島朋人

中島朋人

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中島朋人

1973年4月2日生まれ、神奈川県出身。戌井昭人主宰のパフォーマンス集団、鉄割アルバトロスケット所属。主な出演作は『サウダーヂ』(11)、『マイ・バック・ページ』(11)、『野火』(15)、『ディアスポリス -DIRTY YELLOW BOYS-』(16)、『ハードコア!』(18)などがある。大森立嗣監督とは『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』(09)に続いての出演となる。

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大谷麻衣

大谷麻衣

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大谷麻衣

1989年4月17日生まれ、千葉県出身。映画、ドラマ、舞台と幅広く活躍。主な出演作は『娼年』(18)、『神宿スワン』(17)、『校庭の轍』(17)、『向こうの家』(17)、『ばぁちゃんロード』(18)、ドラマ『相棒 season17』などがある。写真集「MAI OHTANI」は、写真家・篠山紀信の撮り下ろし作品である。

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播田 美保

播田 美保

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播田 美保

熊本県出身。ドラマと映画に数多くの出演経験を持つ。主な出演作は『俺俺』(13)、『R100』(13)、『アブダクティ』(13)、『アイアム ア ヒーロー』(14)、『沈黙 SILENCE』(15)、『こどもつかい』(16)、『菊とギロチン』(18)などがある。

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水上 竜士

水上 竜士

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水上 竜士

1964年12月26日生まれ、富山県出身。俳優、作家、演出家として活躍。劇団唐組 退団後、THEガジラなど小劇場、及びプロデュース公演に参加。その後、映画・TVへと進出。また演劇企画ユニットTokyo・Fを旗揚げし、作・演出として数々の作品を送り出す。主な出演作として、『ヴィヨンの妻』(09)、『11.25自決の日 三島由紀夫と仲間たち』(12)、『千年の愉楽』(13)、『日本のいちばん長い日』(15)がある。

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小林 千里

小林 千里

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小林 千里

1962年10月29日生まれ、岐阜県出身。1984年より解散まで転形劇場に参加。その後、演劇集団U・フィールドに参加し、解散迄全ステージに立つ。映画、ドラマ、演劇に幅広く活躍。主な出演作は「とと姉ちゃん」(16/NHK)、『いぬやしき』(18)、『Mr.Long ミスター・ロン』(17)、『ばぁちゃんロード』(18)などがある。大森監督とは、『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』に続いての出演となる。

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原沢 侑高

原沢 侑高

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原沢 侑高

1996年12月17日生まれ、山口県出身。特技は柔道で、兄はリオ五輪柔道銀メダリストの原沢久喜。高校卒業後、劇団俳優座研究所にて芝居の基礎を学ぶ。主な出演作に、ドラマ「絶対零度 未然犯罪潜入捜査」(18/CX)、舞台「バカデカ~勿忘草~」(劇団男魂)、MVに松室政哉「衝動のファンファーレ」(19)などがある。

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伊藤 佳範

伊藤 佳範

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伊藤 佳範

1980年5月23日生まれ、青森県出身。「カフェ代官山Ⅱ〜夢の続き〜」(08/武正晴監督)で俳優デビュー。映画、ドラマ、舞台と幅広く活躍。主な出演作は『うさぎドロップ』(11)、『黄金を抱いて跳べ』(12)、『許されざる者』(13)、『雨にゆれる女』(16)、『サバイバルファミリー』(17)、『リングサイドストーリー』(17)、『教誨師』(18)がある。

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大駱駝艦

大駱駝艦

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大駱駝艦

麿赤兒主宰。1972年創設。その様式を”天賦典式”(てんぷてんしき:この世に生まれ入ったことこそ大いなる才能とす)と名付け、忘れ去られた「身振り・手振り」を採集・構築し、数多くの作品を生み出している。1982年、舞踏カンパニーとしては初のフランス・アメリカ公演を行い、鮮烈なインパクトを与えて広く「Butoh」を浸透させた。現在、東京・吉祥寺にあるスタジオ「壺中天」(こちゅうてん)を拠点とし、精力的に新作を発表し続けている。

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監督・脚本・編集 大森立嗣

監督・脚本・編集大森立嗣

1970年、東京都出身。大学時代に入った映画サークルがきっかけで自主映画を作り始め、卒業後は俳優として活動しながら荒井晴彦、阪本順治、井筒和幸らの現場に助監督として参加。2001年、プロデュースと出演を兼ねた奥原浩志監督作「波」が第31回ロッテルダム映画祭最優秀アジア映画賞“NETPAC AWARD”を受賞。その後、荒戸源次郎に師事し、「赤目四十八瀧心中未遂」(03)の参加を経て、2005年「ゲルマニウムの夜」で監督デビュー。第59回ロカルノ国際映画祭コンペティション部門、第18回東京国際映画祭コンペティション部門など多くの映画祭に正式出品され、国内外で高い評価を受ける。二作目となる「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」(10)では第60回ベルリン国際映画祭フォーラム部門正式招待作品に選ばれ、2010年度の日本映画監督協会新人賞を受賞。13年に公開された「さよなら渓谷」(13)では第35回モスクワ国際映画祭コンペティション部門にて日本映画として48年ぶりとなる審査員特別賞を受賞するという快挙を成し遂げる。さらには、「さよなら渓谷」「ぼっちゃん」(13)で第56回ブルーリボン賞監督賞も受賞。また「日日是好日」(18)では、第43回報知映画賞監督賞を受賞する。その他の監督作として「まほろ駅前多田便利軒」(11)、「まほろ駅前狂騒曲」(14)、「セトウツミ」(16)、「光」(17)、「母を亡くした時、 僕は遺骨を食べたいと思った。」(18)がある。

フィルモグラフィー

  • 『ゲルマニウムの夜』(2005)
  • 『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』(2010)
  • 『まほろ駅前多田便利軒』(2011)
  • 『ぼっちゃん』(2013)
  • 『さよなら渓谷』(2013)
  • 『まほろ駅前狂騒曲』(2014)
  • 『セトウツミ』(2016)
  • 『光』(2017)
  • 『日日是好日』(2018)
  • 『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』(2019)

音楽大友良英

1959生。映画やテレビの音楽を作りつつ、ノイズや即興の現場がホームの音楽家。震災後は故郷福島での活動で2012年芸術選奨文部科学大臣賞芸術振興部門を受賞。最近の主な作品に「俳優 亀岡拓次」(16/横浜聡子監督)、「月と雷」(17/安藤尋監督)、「返還交渉人 いつか、沖縄を取り戻す」(18/柳川強監督)、 2019年NHK大河ドラマ「いだてん」など。大森監督とのコラボレーションは「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」 (10)「ぼっちゃん」(13)、「母を亡くした時、 僕は遺骨を食べたいと思った。」(18)に続いて4作目である。

企画の成り立ち

『タロウのバカ』は、大森立嗣監督がデビュー作『ゲルマニウムの夜』の前から書いていた脚本がベースとなったものだ。いよいよ機は熟したとばかり、大森監督の大学時代からの自主映画仲間でもある、映画製作会社ハーベストフィルムの近藤貴彦プロデューサー(以下、近藤)は2017年から映画化の実現に向けて本格的に動き出した。大森監督とのタッグとしては、『さよなら渓谷』『ぼっちゃん』『セトウツミ』『光』『日日是好日』に続く6作目となる。
「脚本は20年以上前に書き始められたものですが、基本的な設定などはほとんど変わっていません。大きな変更は冒頭の障がい者施設のシーンくらいです。元々、大森監督がずっと1番撮りたかった作品で、長年企画を大切に温めていました。あとは世に問うタイミングだけが問題だったように思います。僕自身もその並々ならぬ監督の熱意を知っていましたから、自分がハーベストフィルムを立ち上げてから、どこかで必ず完成させたいと思っていました。そして今回、満を持してすべてのタイミングが合致したというわけです」
なぜ今になって映画化の運びになったか――そこには強い時代の必然があると近藤は語る。
「大森作品は社会の底辺、あるいはその枠組みから外れた人々を描くことが多い。そして今回、改めて脚本を読んだ時に、育児放棄といったネグレクト(弱者虐待)など、今の深刻な社会問題と重なる要素があまりにも多いことに驚いたんです。また新たに加えられた冒頭のシーンは、2016年に起こった相模原の障がい者施設殺傷事件を想起させたり、まさしく現在の日本社会と背中合わせになっている。映画のストーリーは少年タロウの純粋な衝動を描くという軸があって、その精神性も我々が生きている状況への問題提起としてダイレクトに突き刺さる。今、映画化することは最良のタイミングだと思いました。
現実の問題や事件をも取り込み、フィクションとして一歩も引かず描き切ることが、本作の凄みかと。とにかく大森監督には思いっきりやって欲しい。大きく賛否分かれるくらいのパワーを爆発させて欲しいと最初から望んでいました」

障がい者施設のシーンについて

この映画では観る者に鋭利な衝撃を与えるシーンが最初から用意されている。それがまるで廃墟のような、劣悪な環境に置かれた障がい者施設のシーンだ。大森監督が今の時代性を意識的に反映させたパートであり、現代のタブーに近い、なかなか目に触れられない場所を開いたような生々しさがある。このシーンの撮影に向けて尽力したのが助監督の森井勇佑だ。
「設定としては、半グレ集団が障がい者を匿っている施設。まともな病院や介護施設ではなく、障がい者を死ぬまで面倒を見るという名目でお金を搾取している施設です。もちろん完全にフィクションではありますが、リアルな問題意識の延長で大森監督がイメージされたものです」
介護施設の労働環境などの様々な問題については、ニュースやルポルタージュでもよく報じられている。
「それだけに撮影のための交渉はとてもデリケートでした。重度障がい者の施設に出演のお願いをするのですが、やはり映画の内容を伝えると、相模原の事件を想起される方が多く、断られることが多かったです。当然のことですが、各施設の職員の方々は、この事件は思い出すのも辛いことですので。
一旦受諾をいただいても、具体的な台詞など詳細を伝えるとお断りされる場合もありました。結果的に温かくご理解いただき、実際にご協力いただいた施設(団体)は、社会福祉法人睦月会、スーパー猛毒ちんどんほか、計3施設(団体)になります。とても激しい内容ですので、最終的に出演を決定してもらう直前に、みなさんの前で該当シーンを読み上げ、内容の説明とこちらの意図を伝え、理解し納得していただくまで話し合いをした結果、出演を快諾していただきました」
そうしたスタッフの誠意を真摯に汲み取ってくれた出演者たちは、映画作りの現場を新鮮な気持ちで楽しんでくれたという。
「あの施設は山梨県の山中湖にある昔は社員寮だった建物を借りて、ベッドなどを持ち込んで美術を作り込みました。ご協力いただいた皆様の各施設で、完成した映画の試写を行ったのですが、皆様とても映画を気に入っていただけたようでした。
僕らにとってもそうですが、やはり映画作りって非日常の祭りみたいなものであり、とても楽しいことなんですね。健常者とか障がい者とか関係なく。自分たちの意思を持って、内容も理解したうえで出演してもらったことに本当に感動しております。能動性を持って我々の映画作りに参加していただけたことは、障がい者の方たち自身のメッセージとも言えるのではないかと思っています」

キャスティングについて

本作における「満を持して」の部分を端的に表すのはキャスティングだろう。これほど挑戦的でハードな映画に、今をときめく豪華キャストが集結しているのだ。近藤も「今だからこそ、これほど充実したキャストが実現した」と語る。
「企画が実現できなかった時期も、ある程度想定のキャスティングは考えられていたと聞いています。まさか今回これだけのキャストを揃えられるとは……きっと役者さんの側もどこか飢えているというか、本気の試みに気概で乗ってくれる人が多くなったんだろうと思います。エージ役の菅田将暉さんとスギオ役の仲野太賀さんは、大森監督の意向です。二人に快諾してもらったことから、この映画が始まりました。」
さらに映画の神様が降り立ったのは、主役のタロウを演じる驚異の新人、撮影当時15歳のYOSHIの発見である。タロウ役に関しては絶対条件として、リアルに思春期の只中を生きている役者を選ぼうと決めていたらしい。
「タロウは作品の根幹ですので、大人になる前の肉体を持っている人じゃないと成立しないと思っていました。オーディションも行い、数多くの若い俳優と会って検討したのですが、ただ16、17歳あたりを超えると男性的というか大人になりすぎていて、なかなかこれはという人物は見つかりませんでした。
そんな中、大森監督がインスタグラムやWEBのインタビュー記事で気になっていたYOSHIさんに会ってみようと。完全に初対面でしたが、第一印象から強烈な印象で、監督も僕も『タロウがいた!』と。まさに運命の出会いと言えるかもしれません」
このメインの少年役3人が決定したあと、周りのキャストも実力者たちで固められていった。
「洋子役の植田紗々さんも大きな発見でした。売春を繰り返す少女という難しい役なので大森組では珍しく大々的にオーデションを行い、その中で演技が抜群に良かったんです。さらに奥野瑛太さん、豊田エリーさん、そして短い出番ながら國村隼さんに出ていただけたことには感激しました」
また映画の中で格別の印象を残す重要なキャストがいる。ダウン症のあるカップル、藍子と勇生である。
「ラブジャンクスという、ダウン症のある方のためのエンタテイメントスクールがありまして、代表である牧野アンナさんに、この2人のオーディションを実施させていただき、藍子ちゃんと勇生くん役が決まりました。藍子を演じた角谷藍子さんは歌手デビューもしていて、劇中でも歌っていただいた『あいこでしょ』は実際にリリースしている曲です」

撮影について

撮影は2018年9月の約一ヶ月で行われた。ロケ地は東京都足立区がメインで、あとは埼玉県三郷市と千葉県木更津市。匿名的な郊外のイメージで統一した空間になるように監督と制作部はロケハンを入念に行った。そんな中、YOSHIは足立区にある現場のマンション――劇中で使っているタロウの自宅に住み込みで撮影する運びとなった。
「彼にとって初めての現場だったこともあり、映画の世界の中にどっぷり浸って生活してもらおうと。その際、吉岡率いる半グレ集団の一人、矢口を演じた荒巻全紀さんが、YOSHIの演技指導兼見守り役を務めてくれました。毎朝起床するところから、一日の撮影が終わった後の食事とか銭湯とか、いろいろ面倒を見てもらいました。撮影中は何日か大森監督も泊まっていましたね」
今回は全編に渡りオールロケ。郊外を草原のように駆け回るタロウ役のYOSHIをはじめ、若いエネルギーを臨機応変に捉えていくため、少人数体制の自由な撮影スタイルが取られた。
「カメラマンは辻智彦さん。大森監督とは2013年のWOWOWドラマ『かなたの子』以来となる二度目のタッグですが、若松孝二監督作品『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』『キャタピラー』を担当されている方で、今回はほとんど手持ちでドキュメンタリー・タッチの撮影を行いました。360度カメラを回すこともあり、機動力の高い少人数チームでないと成立しなかったと思います。
セットは一切使っておらず、タロウ、エージ、スギオの3人がアジトにしている家は、実際に建築中の家をお借りして撮影しました。撮影から時間が経っていますので、今は無事に家が建っているかと思います(笑)。壁の落書きはその都度描きました。また衣装も含めて、画面の色彩には微細なところまでこだわりました。
音楽は『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』『ぼっちゃん』『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』で過去組んでいる、監督との信頼も厚い大友良英さんにお願いしました。本編を通して音楽は少なめですが、かなり印象的に使われています」

作品を世に問うこと

盟友である大森監督の積年の企画を達成することができた近藤は、その喜びを感じつつ、本作を世に出すうえでの緊張感もあると語る。
「本当に凄い映画になったという自信はあります。それだからこそ観る人の思考を揺さぶる問題作として機能して欲しい。映画だからできること――ドキュメンタリーではなく、フィクションで厳しい現実にどれだけ迫れるか。そのテーマを大森監督の個性で徹底的に突き詰めた作品です。そしてオリジナル脚本ということが重要。観客の皆様の反応がとても楽しみです」

ラブジャンクス代表牧野アンナさん

『タロウのバカ』を見終わったあとなかなか席から動く事が出来ませんでした。衝撃を受けたという言葉では足りないほど強烈なインパクトに気持ちがかつてないほどに揺さぶられました。スクリーンの中の少年たちの息づかいや体温が感じられそうなほど「生」を感じる映像はまるでドキュメンタリーを見てるかのように、不器用な感情がストレートにぶつかってきます。大森監督はすぐに2人(藍子さんと勇生くん)の本質を理解し、自然体のイキイキした姿をどんどん出していきました。2人の存在感が凄いです! 全ての出演者の魂の叫びに触れられる作品です。

スーパー猛毒ちんどんコンポーザー佐藤一成さん

産まれた証すらないタロウ。誰にも気づかれない怨嗟の澱。馬鹿笑いと暴力の疾走の末、自ら憤怒そのものになったタロウ。タロウは、クソみたいにこぎれいなバカに成り下がった世界をぶっ壊す、哀しみの最終兵器だ。

社会福祉法人睦月会 法人本部課長森下公美子さん

愛情を与えられることにより、豊かさが心の中に存在することを、改めて再認識する映画でした。